【逆に異色】間借りカレー否定派も是非!「よすが舎」

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間借りカレーは大阪で発展して日本中に広がったのは多くの方が知るところですが、その影響もあってか大阪イズム的なものを感じることが少なくありません。つまり、型破りだけど面白くて美味しい大阪的カレーが間借りカレー店では全国的によく見られるのです。
大阪の間借りカレー店主には、ミュージシャンなど本来他業種にいながら美味しいカレーを作れる人が間借りというスタイルで開業資金がほとんどかからない中で気軽に始めたところ人気に火がつき、カレーがメインに変わったという方が少なからずいらっしゃいます。
飲食店での修業経験がゼロという方もいて、だからこその独自性ある面白いカレーが生まれている一方で、危なっかしさもあるというのは以前もこちらの連載で取り上げた通りです。
そんなこともあるせいか、飲食店での修業した後に開業資金などのリスクを負いながら最初から実店舗をスタートした店主さんの中には、間借りカレーの衛生面に対して心配する方も少なからずいらっしゃいます。
味についても料理のセオリーを無視した作り方な場合あるので、そこも含めて間借りカレーに否定的な方が多いのは知っています。 しかし今回ご紹介するのはそんな方にこそおすすめしたいお店です。
池尻大橋駅近くにあるバー、イザックのランチタイムで間借り営業をしている「よすが舎」です。 店主の峰さんの経歴が非常に興味深いものなので最初に簡単に説明すると、大学生の頃にふらりと入った「砂の岬」で食べたカレーに衝撃を受けてインド料理に興味を持ち、エリックサウスでアルバイトを開始。その際に一緒に働いていたのが大人気店「魯珈」の齋藤さんや「スパイスドランカーやぶや」の藪さんなど錚々たる面子。
大学卒業後はIT企業に就職し3年程勤めるかたわら、ライヴハウスのイベントなどでカレーを出すということもしていたそうです。独学のみならずキッチンスタジオペイズリーで2年ほどカレーやインド料理を学んでいる中で「カレーを作っている方が楽しい」と気づき、会社に雇われているよりも自分一人で手に職つけて生きていきたいと考えるようになり、退社してからは名店「桃の実」で本格的な修業をスタート。その後「よすが舎」をスタートさせたという流れです。 カレーおじさん\(^o^)/(以下、カ):峰さんは学生時代にエリックサウス、会社員時代はペイズリーと、実に由緒正しい所でカレーやインド料理と向き合ってきたわけですが、脱サラして本格的に料理を始めるにあたって修業の場として数ある由緒正しいお店の中から桃の実を選んだのはどのような理由ですか?
よすが舎店主峰さん(以下、峰):まず私が食べに行って心底感動したお店であるということが第一です。そして瀬島さん(桃の実オーナーシェフ)も加来さん(かつてあった水道橋店の店主)も、本物のインド料理を学んだ方ということもあり、本物を知る方の元で勉強したいというのが強かったです。結果的に桃の実を選んだことは私の人生の中でも最良の選択のひとつだったと感じています。
カ:素晴らしい桃の実愛ですね!
峰:はい。料理の面でも衛生管理の面でも、本当に色々なことを教えてもらうことができました。もちろんエリックサウスやペイズリーでも多くのことを教えていただいたのですが、桃の実でさらに深く学んだことをしっかりと活かしてお店をやっていきたいと考えています。 峰さん、本当に真面目な方なんです。そしてそれは桃の実の瀬島さんにも、加来さん(現在は桃の実を退社し、ご自分のお店の準備中)にも言えること。面白いものを柔軟な発想で生み出す大阪イズムに対して、東京イズムは正統派志向であることだと感じているのですが、まさに桃の実は東京イズムであり、峰さんはその魂を受け継ぐ方なのです。
カレーもスパイスカレー的に見えて本格的なインド料理。
メニューは月替わりのカレーと週替わりのカレー、それに合わせる副菜というラインナップなのですが、今回はは月替わりのチェティナード風ビーフキーマをメインに副菜をつけ、ミニカレーにバターチキンも合わせてオーダーしました。
ビーフキーマはカルパシが薫るカレー。カルパシを使うのは本当に難しいと色々なシェフから聞いたことがありますが、このカレーに関してはカルパシがちゃんと効果的に使われており、インド料理に対する技術の高さと知識の深さを感じます。
マニアックな美味しさのビーフキーマに対してバターチキンは誰にでもわかりやすい美味しさ。インネパ店やスパイスカレー店のバタチキではなく、インド料理としての正しく美味しいバターチキンでありムルグマッカニーなのです。
副菜にはダルタルカ。これも桃の実イズムですね。濃厚な豆カレーで完璧な脇役です。
そして食後のアイスクリームも最高に美味しいんです。
インド料理のクルフィを日本人が馴染みやすいアイスクリームに仕立てたもの。
徹頭徹尾素晴らしい! カ:今日も最高の美味しさでした! 今日は特に桃の実イズムを感じましたよ。
峰:ありがとうございます。
カ:以前僕が間借りカレーをやる上で気をつけないといけないことを記事にした際(https://share-restaurant.biz/magazine/?p=7035)、それを瀬島さんが読んでくれていたようで「あの記事、本当に良かったです。警鐘を鳴らす意味で大事なこと。飲食業界の人間として、ありがとうございます。」と丁寧にお礼を言われたことがありまして、そんな瀬島さんのもとで修業されていた峰さんが間借りからスタートなのは意外でもあるんですが、何故間借りカレーのお店を始めたんですか?
峰:簡単に言うとコロナ禍が原因です。コロナ禍入って最初の緊急事態宣言の際に、桃の実も営業できない日が増えてしまいまして、どうやって働いていこうかと考えていました。そんな中で友人が働いていたバーで昼に間借りしてくれるお店を探しているという話が来たんです。それに乗って桃の実を卒業することにしまして、2020年の6月によすが舎をオープンしたという形になります。
カ:まさに最初の緊急事態宣言があけてすぐですね。
峰:はい。緊急事態宣言中に準備を進めまして、あけてからスタートして今に至ります。
カ:間借り営業スタートしてから、間借りならではの良さを感じたことってありますか?
峰:やはり開業資金もほとんどかからずすぐにオープンできたこともあるのですが、私の場合は間借りしているバーとのコラボ営業ができたことも大きいです。それによって夜のお客様が昼に来てくれるようになったり、逆に昼のカレーのお客様が夜のバーにも行ってくれるようになったりと、お互いに良かったなと思えることがありました。
カ:それは素晴らしいですね! せっかくなのだからコラボが可能ならすべきです。他の間借り店にもおすすめしたいですよ。まさにウィンウィンですもんね。
峰:はい。そうだと思います。
カ:今後の展望はどのようなものですか?
峰:やはり最終的には独立して自分のお店を持ちたいということがあり、今も物件を探しながら営業しています。なかなか良い場所が見つからないのですが、見つかり次第独立したいと考えています。
カ:ということは、この場所で営業しているのもいつまでかわからないということですね。気になったらすぐに食べに来ないとだ。
峰:ずっと探してはいながらまだ物件見つかってないので、すぐにということは無いかもしれませんが、こればかりはタイミングなので。
カ:ですね。独立、期待しています! そしてそれまではこの場所で本物の美味しさを作り続けてください!
峰:ありがとうございます! とにかく真面目な人柄の峰さん。独自の感覚で面白いカレーを出す間借りカレーの世界の中では逆に異色の存在とも言える、本格的なインド料理をカレーに落とし込んだ絶品料理をいただけるお店です。
間借りカレー否定派も、スパイスカレー否定派も、よすが舎に関しては肯定せざるを得ないのではないでしょうか。
インタビュー内にもありますが、いずれ行こうとBMしておくのではなく、気になったらすぐに行って欲しいお店であり、わざわざこの為だけに行く価値のあるお店です。
インド料理に興味はあるものの本格的すぎるお店は敷居が高いと感じてる方にもおすすめですよ!

店舗情報

店 名 カレーの店 よすが舎
住 所 東京都目黒区東山3-15-4 メゾン・ド・カナリ 1F イザックさん店内
最寄駅  池尻大橋駅東口より30秒
定休日  日・月
営業時間 11:00-14:00(L.O) ※土曜のみ14:30(L.O)
https://twitter.com/YosugaSha_Mine https://yosugasha.mystrikingly.com/

カレーおじさん\(^O^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!