【間借り経営者必見】美味しくて勉強になる「スパイスカレーizon」

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店主のヨシフジさん(左)と従業員のナカヤマさん(右)
間借りカレーブームが巻き起こった場所と言えば紛れもなく大阪ですが、その大阪の隣である京都にも間借りカレーの波は広がっています。
そんな中で僕が特に注目するお店が「スパイスカレーizon」。
現在は間借りを卒業して実店舗を構えているのですが、その場所には元々他のカレー専門店が入っていた場所。
「え? ここ入るの?」というような細い道を入った奥に佇む古民家的一軒家。入ってみると外の陽光も差し込んで非常に良い雰囲気のお店です。 izonのカレーの特徴であり、お店のスローガンにもつながるのが「世界一周カレー」。世界各国の食文化や歴史をカレーに落とし込んだという意欲作です。
この日のカレーはオーストラリアがテーマ。オーストラリアの原住民であるアボリジニの食文化をカレーと融合させた一皿でした。 特に面白いと感じたのはベジマイトという発酵食品を使ったチキンカレー。個人的な話ですが僕はオーストラリアにホームステイしていたことがあり、その際に食べたもので最も衝撃的だったのがベジマイトでした。子供の頃の僕の味覚には全く合わず、残してしまったあのクセ強食材ベジマイト。それがカレーになると聞いて逆にこれは確実に美味しくなるだろうと思いました。カレーのスパイスにはヒングという強烈な匂いを発するものがありますが、ヒングが入ることによって格段に美味しさが跳ね上がる料理もあるのです。 それに近いだろうなとベジマイトカレーを食べると予想通り。ベジマイトを知っている人であればほのかに感じるベジマイト感。しかし知らない人には気にならずに美味しく食べられるという絶妙な着地点が見事です。
他にもオーストラリアのハーブであるレモンマートルや、実はオーストラリアが原産であるマカデミアナッツを使ったカレーなど、どれもがカレーとして確実に美味しく、食べれば自然とオーストラリアを想わせるもの。
これを作れるのはただものではありません。
今回はizon店主ヨシフジさんにお話をうかがってきました。 カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記」):美味しいだけじゃなく面白さもあって最高でした。過去に行ったオーストラリアを思い出させる一皿でした。
izon店主ヨシフジさん(以下「ヨ」と表記):ありがとうございます! 実際オーストラリアにこういうカレーがあるわけではないと思うんですが、オーストラリアの食材を使うことによって色々とオーストラリアを想ってくれたら嬉しいです。
カ:世界一周カレー、今まで何カ国くらいのカレーを作ったんですか?
ヨ:50カ国くらいですかね。同じ国で複数回作ったこともあります。1回目は食文化からのアプローチ、2回目は歴史からのアプローチなどと変えているので、可能性は無限にあります。
カ:楽しいですね! 何故そのようなスタイルのカレーを作るようになったのですか?
ヨ:世界へ旅に出て現地で色んな人と話していると、良い人が多いんです。日本で「あの国はああだ」みたいに言われてる国でも、実際一対一で話すとそんなことなかったり。けど日本に帰ってくるとやっぱりそういう偏見とか差別みたいなものを感じることが多くて。食事によってそういう差別や偏見を無くすきっかけができたら良いなと思って作っています。
カ:素晴らしい! 確かに美味しいものが食べられる国はイメージ良くなりますもんね。
ヨ:そうですね。ただ食べてもらうだけではなく、毎回メニューにも詳しく説明を書いているんです。料理ができるまでの時間にそれを読んでもらえると、より料理に対する理解度も深まると思いますし、その国のことも少し知るきっかけになると思います。 カ:しっかり読まさせていただきました。それにしても色々な料理の知識がないとできないと思うのですが、シェフとしてはどのような経歴なのですか?
ヨ:実はちゃんとした経歴がないんです。というのも元々アパレルをやってまして、間借りカレーをスタートしたのも自分が経営していたお店の午前中の時間が空いているのがもったいないと感じ、そのお店の隣がタイ料理店だったんですが、そこで間借りさせてもらって昼の時間を有効活用したというのが始めなんです。若い頃に飲食店でバイトしていた経験はあるんですがその程度で、料理は好きだったんですがカレーは独学なんです。
カ:へー! そうでしたか。センスがあるんですね。そこから現在に至るまでの経緯も教えていただけますか?
ヨ:最初が上京区のお店だったんですがそこのオーナーの紹介で烏丸の日本酒バーへ移転して営業していたのですが、ナチュレミアン(izonの場所で以前営業していたカレー店)さんが健康上の理由でお店を閉めることになって、こちらも人の繋がりからあとを受け継ぐことになりました。そこで実店舗スタートとなったのが昨年の10月です。
カ:そうだったのですね。実はナチュレミアンがお店閉める際に僕も相談受けてたんです。「健康上の理由で閉めざるを得ないのですがこの愛着ある場所を信頼できる人に受け継いで欲しい。誰か良い人はいませんか?」というような形で。その際に色々お話したんですがやはり京都って古くからのしきたりとかが厳しい街だから色々と難しいという話も出ていて。やはりそういう繋がりがあってこその京都間借りカレー界なのでしょうか?
ヨ:京都の間借りカレー店同士は、それほど深い繋がりはないと思います。大阪と比べると人と人の距離がある印象ですね。でもやはり自分も移転の際にはオーナーの紹介だったりと、結局は人の繋がりだったので、そういう意味では広い意味での人脈がないと京都は色々難しいかもしれません。
カ:なるほど。京都人の独特の建前みたいなものもよく話題にあがる部分でもあったりしますし、なかなか大変そうですね。
ヨ:仲が悪いわけではないんですよ。僕も間借りカレー店へ食べに行きますし、逆に食べに来てくれる方もいて、挨拶もしますし。
カ:適度な距離感というわけですね。京都らしくて良いと思います。では、これから間借りカレーを始めようと考えている方へアドバイスなどありますか?
ヨ:協力者が重要です。最初にスタートしたのは1人だったんですが、そうなると色々と本当に大変でくじけそうになることもあって。でも今は古い友人のナカヤマに協力してもらっているので色々と助かってます。
カ:ナカヤマさんはドリンク担当なのですか?
izonナカヤマさん(以下「ナ」と表記):はい。昔バーテンダーをやっていたこともあって、その時の経験を元にカレーに合うドリンクを考えています。
カ:この赤しそスカッシュも美味しかったです。ナカヤマさんはどのようにしてこちらを手伝うことになったんですか?
ナ:昔からの友達(ヨシフジさん)がカレー屋を開いたと聞いて最初は客として食べに行ったんです。そこで色々な話を聞いているうちに、食べ物で差別や偏見を減らしたいとか、食べ物をアートとしてやりたいという考えに感銘を受けまして、ドリンク手伝うよということになりました。
ヨ:自分は飲み物に関しての知識があまりないのでとても助かっています。おかげで今は炭火の日というのを作って、炭火焼のスパイス料理でお酒を飲める営業日もできるようになりました。
カ:それも楽しそうですね! 来る度に様々な料理が味わえそうで飽きることなく通い甲斐がありますね。また来ます!
穏やかな雰囲気の中に確固たる哲学を感じる眼差しのお二人。リスペクトしあいながらお店を切り盛りする姿が印象的なでした。
間借りのお店はワンオペも多い中、このように協力者がいることによって可能性が広がることもあります。
理解者、協力者が出てくるのもやはり確固たる哲学あってこそ。
本当に素敵なお店です。美味しいだけではなく勉強にもなるカレー。地元の方はもちろん、全国の方も京都旅行の際には是非立ち寄ってみてください!

店舗情報

店 名   スパイスカレー izon(イゾン)
住 所   京都府京都市中京区毘沙門町557-1
店休日   月火
営業時間  ランチ 11:30〜15:00 夜営業 18:30〜22:00
Instagram https://www.instagram.com/izon_curry/

カレーおじさん\(^O^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!