場所は浅草のガヤバジ。実はガヤバジは大阪でも東京でも間借り経験があり、独立して今や食べログ百名店にも選ばれる人気店となったお店。 店主冨永さんの奥様であるガヤさんの出身地である西インド料理にこだわったメニュー構成は東京においても珍しく、しっかりとスパイスがきいていながら毎日でも食べられそうな優しい味わいが印象的。
行くたびに美味しさのレベルが上がっているようにも感じ、通い甲斐のあるお店です。
カレー好きはもちろん、間借り業界、飲食業界に興味のある方必見の内容となっていますので是非最後までご覧ください。
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カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記):まずはシェアレストランの歴史を簡単に教えてください。シェアレストラン武重さん(以下「シ」と表記):吉野家ホールディングスの社内ベンチャーとして正式にスタートしたのは2020年3月なのですが、2017年頃から大阪の間借りカレーに興味を持って食べに行ったり調べたりするようになりました。そんな中でカレーおじさん\(^o^)/が出演していたマツコの知らない世界の間借りカレーの世界を見て「やはりこれだ!」と思いまして、2018年からテストスタートしました。ちなみに1号店は新宿駅前にあったカリガリさんです。
カ:最初からカレーだったわけですね。間借り業界も最近は間借りラーメンや間借りカフェも聞くようになりましたが、やはりカレーが一番多いのでしょうか?
シ:そうですね。やはり安定してカレーのお店は多いです。スタートの年から昨年度まで毎年平均して全店舗の15%前後はカレーのお店です。これは食べログの全国の全登録店舗と比べるとわかりやすいのですが、食べログだとカレーは3%なんです。
カ:ラーメンや居酒屋やカフェなど全飲食業態の中で3%がカレー関係ということですか。意外と少ないんですね。
シ:はい。エスニックというジャンルもあり、この中にはインド料理もあるので実際のイメージとしてはもう少し多いかとは思うのですが、エスニックにはカレー無関係の韓国料理や焼肉も含まれているので、それを考えるとラーメンの7%と比べると確実に少ないでしょうね。
カ:やっぱりラーメン強いですね。
シ:そうなんです。それがシェアレストランの店舗で割合を見るとカレーは13%となり、全業態の中でもダントツ1位となります。
カ:単純に4倍以上の割合となるわけですね。確かにカレーは他の業態と比べると間借りという環境でも作りやすいこともあるでしょうし、やはり「間借り」という言葉がカレーの世界から認知され出したからということもあるのでしょうか?
シ:そうですね。間借りという言葉を広めたのは間借りカレーだと言って差し支えないと思います。
カ:僕自身も間借りカレーという言葉は大阪で起こったムーブメントから知りました。東京でも間借りカレー店はあるにはあったんですが少なかったですし、そもそもその言葉を知る前は間借りなのか実店舗なのかどちらか知ろうとも思っていませんでした。大阪で面白くて美味しいカレーのお店が増え、その多くが間借りカレーだったということから興味を持ったんです。そのあたりは冨永さんに当時の空気感聞いてみたいですね。冨永さん、どうでした?
カ:そうですよね。大阪だとカレー関係の雑誌も多かったしそこで見た目キャッチーな店主さんが作る他にない個性的なカレーが本当に多かったです。堕天使かっきー(現在も間借りやイベントで全国各地を巡りながら自身の独立店舗「堕楽暮」を大阪は松虫駅前に構えて営業中)のキャッチーな見た目とキャラが作る他で見たことのないカレーとか。
ガ:あとはマガリー(現在は西田辺駅近くで「マガリーダッタ」と名を変えて独立)の店主さんのパンキッシュなルックスでエスプーマのカレーとか、本当に色々ありましたね。
シ:大阪の間借りカレーが盛り上がったのはそういう人達が多かったからなんでしょうか?
ガ:それもありますし、さらにはそういう方々がカレー業界を盛り上げようということでカレーの新しいお店ができるとみんな食べに行ってたんですよ。うちなんかは大阪で間借りしてた時は本当に小さいお店だったんですが、そんなお店にもWaccaさん(大阪で人気店となり東京は八丁堀に移転し、食べログ百名店にも選ばれた名店)が食べに来てくれてたりとか、自分もそうですけど、どこどこに新しい店ができたと聞くとすぐ食べに行ってましたね。だから横のつながりもとても強かったし、今も強いと思います。
カ:そんな状況に加えて大阪のシェフ達はレシピをいとも簡単に教えてくれる人が多いというのもあると思うんです。間借りカレーが広まった頃に心斎橋でアノニマスというバーを営みながら本町でカレー週イチという間借りカレー店も手がけていた黒田さん(現在も東大阪で「CURRYFORNICATION」という間借りカレー店を営業中)なんかが代表的だと思うんですが、レシピの共有もあってみんなで美味しいカレー作って盛り上げていこうという雰囲気がありましたよね。
シ:なるほど! 吉野家の創業者と同じですね。実は吉野家の創業者も作り方を簡単に教える人で、現在吉野家以外の牛丼チェーンで有名なところにも作り方を教えていたという伝説があるんです。
カ:やはりそういう方がいると文化として広がっていくのでしょうね。文化と言えば先程話題に上がった方々に共通するのが音楽好きという部分で、音楽という文化とカレーという文化が近くにあったからこそ広がったというのもあると思います。ミュージシャンをしながら間借りカレー店を開業し、カレーが人気となって本業がカレーになったシェフは本当に多いですから。
ガ:そうですね。だからカレーのイベントも大阪はとても多かったんだと思います。最近はイベントも減ってきてしまいましたが。
カ:そう。大阪に行くと大阪のカレー業界の方はよく「大阪のカレーブームは終わった」と話すんですが、確かに一過性の大ブームは落ち着いたかもしれませんが東京から見たらまだまだ大阪のカレー業界は熱いなと感じる部分が多々あります。店舗数の割合で言えば街によっては東京よりも高いパーセンテージでカレーのお店を見かけますし、ブームが過ぎて文化として成立し、成熟していく過程にあると僕は感じています。冨永さんから見て大阪と東京の違いってどういう部分がありますか?
ガ:間借りに限らずですけど東京に来て思ったのは創作系より現地系の店が多いことです。うちも最初から西インドのカレーなんですが見た目は大阪っぽい盛り付けだったのを、これじゃいけないと思って食器買いに行って、盛り付けも現地感を強めたんです。
カ:確かにそうでしたね。人気に火が付いたのも現地的な食器で盛り付けてからですもんね。
ガ:はい。それともうひとつ、飲食店同士のつながりが東京は薄いなとも思います。大阪が強すぎるだけなのかもしれませんが。
カ:もちろん東京でもカレー屋さん同士のつながりはある程度存在しますが、確かに大阪のような強さや一体感は無いですね。決して仲が悪いわけではないのですが、店舗数が多すぎてまとまりにくいということも理由のひとつだと思います。
シ:大阪は横のつながりが強いからこそ間借り文化が大きく広がったんでしょうね。私自身、間貸ししてくれそうなお店を探してお話しに行く際も、大阪のお店はとりあえず話聞いてくれる所が多いように感じます。東京は最初構えられるというか、そもそもメールや電話で問い合わせても連絡がつかないことが多いですし。
カ:話は変わるんですがシェアレストラン始まった頃と今で何か傾向の違いのようなものは感じますか?
シ:最初はビジネス寄りの人が多かったんです。原価計算しっかりして安くて元を取れそうな料理で展開していこうと。しかしだいたいそういう所はうまくいきませんでした。
カ:では逆にどのようなお店がうまくいくのでしょうか? 秘訣はありますか?
シ:はい。それはですね…
と、話はまだまだ盛り上がったのですが大分長くなってきてしまったので続きは後編でお伝えします。
後編は来週の公開となります。お楽しみに!
店舗情報
【住 所】東京都台東区西浅草1-6-2
【営業時間】火〜金11:00〜20:00 土8:00〜20:00 日8:00〜15:00
【定休日】月曜日
インスタグラム https://www.instagram.com/gayabhaji/
カレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!