カレーと間借りが変える飲食業界の未来【後編】──カレーおじさん\(^o^)/×シェアレストラン武重~ガヤバジにて

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後編も田原町のガヤバジからお送りします 
本連載筆者である僕ことカレーおじさん\(^o^)/と、シェアレストラン代表の武重さんで今後の間借り業界を考える対談。大阪でも東京でも間借りカレー店の経験があり、独立して食べログ百名店にも選出される人気店となった田原町のガヤバジで行い、店主冨永さんも参加しておおいに盛り上がった前編。
後編は間借り業界で成功する秘訣や間借り業界の未来を考える内容のトークとなりました。
是非前編と合わせてお楽しみください。

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カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記):間借り店ではどのようなお店がうまくいくのでしょうか? 秘訣はありますか?
シェアレストラン武重さん(以下「シ」と表記):はい。それはですね、メニューやレシピをどんどん変えていくお店は人気が出る可能性が高いです。先程話したビジネスで始める方は最初のレシピから全く変えないんです。ですが、人気が出るお店は限定メニューを出したり、同じメニューでもレシピのブラッシュアップをしていく所が多いです。
カ:それは確かに! 間借りかどうか関係なく、やはり人気出るお店はどんどんレシピ変えていきますよね。大久保の魯珈(ミシュランビブグルマンにも選出された今や日本を代表するカレーの人気店)も最初と今ではだいぶ味違いますし。お客さんのニーズや時代に合わせて少しずつ変えていく柔軟な姿勢と、それを見極められるかどうかということが人気が出るかどうかにつながるということですね。
シ:そうですね。日本橋の「酒とスパイス マツコ」さんなんかも毎回違うカレーを出すと決めて自分を追い込んでいるからこその強さがありますし、だからこそ常連さんが多いんだと思います。
カ:やはりカレーを愛しているということですよね。愛無く金になるからと計算で始めてもうまくいく業界ではないと痛感することが多いです。話少し戻りますが、昔はビジネスとして始める方が多いとのことでしたが(前編参照)、今はそういう方は減ったのでしょうか。
シ:はい。カレー作りが好きで自分のカレーのお店を持つんだという方も多いですし、最近は趣味的に始める方もいます。スパイスカレー作りが好きなんだけど家では家族の好みに合わせてルウでカレーを作っている主婦が、もっと多くの人に自分のスパイスカレーを食べて欲しいという思いで始めたり。
カ:言い方悪いかもしれないですが完全に素人が趣味でスタートするのは危険な部分も少なからずあると思います。その点はいかがですか?
シ:そうですね。もちろんそこはしっかり学ばないといけない部分も多くあるので、最低限「食品衛生責任者」の資格は取ってもらうように伝えています。カレー以外の業態だと店舗で修業された方がほとんどなのですが、カレーは店舗経験無い方の方が多いかもしれません。
カ:その敷居の低さや自由度が大阪の間借りカレー文化を作ったという部分は確実にあると思いますが、飲食を仕事にするということは他人の命に関わる仕事なんだという責任感を持たないといけないですよね。
シ:その通りです。飲食未経験の方には特に伝えるようにしています。
カ:その他で最近の傾向はありますか?
シ:これは間借り業界としては朗報なのですが、シェアレストラン出身のラーメン店が昨年食べログのラーメン百名店に3店舗も選出されたんです。 カ:カレーでは間借り出身で百名店に選ばれたお店は多いですが、ラーメンでも出始めましたか。
シ:はい。ラーメンの場合は実力はあるのに引っ込み思案というか自信を持てていなかった方がテスト営業的に間借りでスタートし、多くのお客さんがついて自信となり、独立して成功というパターンが多いように思います。
カ:カレーの場合は逆が多いかもしれませんね。妙に自信満々で間借りスタートしたもののまるで人気が出ず終了というような。
シ:いずれにしても間借りというのはどちらの方々にとっても良いと思うんです。失敗しても間借りなら金銭面のリスクは低いですし、独立にともなう金銭面のリスクを考えすぎて動けない方の自信につながるきっかけにもなりますし。
カ:まさにそうですね。間借りの良さはやはり金銭面でしょうね。逆に悪さと言うか間借りならではのトラブルもあると思うのですが、今までどういうものがありましたか?
シ:意外とトラブルは少ないんですが、今までで一番大きかったのは、間借りしている方が良かれと思って丁寧に掃除してたらパイプを割ってしまって大規模な水漏れが起こり、下の階に被害が及んで数百万の請求があったということです。ただそれは保険でカバーすることができました。保険に入ってもらうのは徹底していますので。
カ:うわぁ! それは怖いですね。確かに掃除関係はよく聞きます。現状復帰できていない間借り店が少なからずあり、間貸し側が間借りの印象を悪くしてしまうというような。
シ:多くの場合は認識のズレなんです。例えば間貸し側は右側を丁寧に掃除してキープして欲しかったのに間借り側は右側は汚く無いから左側を掃除して、右側はあまり触らずにいたとか。
カ:何がどう綺麗なのかって個人の主観ですもんね。そのあたりはどう調整するんですか?
シ:クレームが入った場合は間に入ってチェックシートを作っています。それでもダメな場合は細かく写真撮って、ここはこのように掃除してくださいとお互いに確認して伝えたり。
カ:そんなことまでしてくれるんであれば安心ですね。話題変わって、先日市ヶ谷のPAIKAJIさんで地方はまだまだ間借りが認知されていないという話が出てきたんですが、実際どうですか?
シ:確かにそうです。シェアレストランが関わっている店舗の割合で言うと、現状8割が東京、1割が大阪、あとの1割がそれ以外となっています。
カ:そんなに差がありますか! 大阪は横のつながりがあるのでシェアレストラン通さず独自に間借りしているお店が数多くあるので実数はそこまででは無いでしょうが、確かに地方だとまだ「間借り」という言葉すら認知されていないという話もありました。
シ:そうなんです。ここは今後の私の目標でもあるのですが、飲食業界において「居抜き」という言葉は全国的に認知されていますよね。でもこの言葉も2007年くらいから広まったもので、その前は知られていませんでした。「間借り」という言葉はカレー業界では認知されていますが、他業種だとまだまだ弱いので、飲食業界全体に「間借り」という言葉が認知されるように広めていきたいと思っています。
カ:確かに自分はカレーの人なので当たり前に間借りという言葉を使っていますが、カレー無関係の人と話すと間借りといってもきょとんとされることが少なからずあります。
シ:そうですよね。今後は地方にも間借りの良さを広げていきたいです。飲食業界は他の業種より圧倒的に廃業率が高く、開業から3年以内で7割、5年以内だと8割が廃業しているという統計があります。
カ:ですね。開店から10年続くお店は1割も無いと。
シ:そうなんです。開業資金の平均価格は居抜きの認知によって昔よりは少なくなりましたが居抜きでも数百万という額になる場合があります。まずはそこまでいく前にテスト営業でリアルな数を見るためにも、間借り営業が広まっていけば飲食で人生が不幸になってしまう方も少なくなると思うんです。
カ:友達に「美味しいからお店開きなよ」などとおだてられて開業しようとしても、その多くはプロレベルではないですし、さらに言えば料理をうまく作れるだけで飲食店はできないですから。経営の部分を勉強するのも間借りというのは良い準備であり経験値になるでしょうし。やってみて自分の料理のレベルの低さに気づくなり、料理作るのは得意でもその他の事務作業や接客ができるのかどうかを知る良い機会となるのが間借りという形だと僕も思います。
シ:私達シェアレストランは吉野家ホールディングスという大手飲食チェーンの関連会社なので、様々な知識やデータを持っています。だからこそのお手伝いができると思っていますし、多くの方にもっと「間借り」いうスタイルをまずは認知してもらいたいです。そのためにもますます頑張っていきます!

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話が盛り上がっている中でガヤバジの冨永さんのご家族が集まっていました。奥様のガヤさん、そして娘さんの幸ちゃん。間借りを経験して学んだことを活かし、独立して成功したからこその幸せがここにあると感じました。
冨永さんも間借り営業をする前は飲食業界で雇われの身として働いていたものの、稼ぎは少なかったと言います。まずは働いていたお店の系列店を間借りさせてもらったそうですが、間借りで自分の店をスタートさせたことが今の幸せにつながっていると言えるでしょう。

今年も本連載は様々な間借りカレー店、あるいは間借りカレー店から独立したお店を取材し、様々なお話をまとめていきます。
是非ブックマークして飲食を営みたい方へお知らせください。
この連載がきっかけとなって間借りを始めて人気店となるお店が出てくるのを目指して、美味しいお店、興味深いお店をご紹介していきます!

店舗情報

【店 名】西インドスパイス ガヤバジ
【住 所】東京都台東区西浅草1-6-2
【営業時間】火〜金11:00〜20:00 土8:00〜20:00 日8:00〜15:00
【定休日】月曜日
インスタグラム https://www.instagram.com/gayabhaji/

カレーおじさん\(^O^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!