左からハラッピ、カレーおじさん\(^o^)/、ラナンクルス、堕天使かっきー
間借りカレーは大阪で花開いた文化と言っても過言ではないでしょう。東京でも古くから「間借りカレー」という言葉が知られる前からそのような業態のお店はありましたが、たまに見かける程度でした。ところが大阪では「間借りカレー」や「ヤドカリカレー」という言葉が生まれるくらいに盛り上がりを見せ、その数は東京をはるかにしのぐ程であり、間借りで行列の人気店になってから独立し、
実店舗を開店してやはり人気店となるというのが大阪カレー界においてはよく見られています。
その後東京でも少しずつ増えてきて、全国に広がっていったのですが、最初に大きな波を見せていたのは大阪で異論無いでしょう。
そんな大阪でも間借りカレーの人気店として知られる
「堕天使かっきー」と、新宿歌舞伎町のホストクラブ的なバーを間借りしているという異色の存在
「ラナンクルス」、さらに北海道は札幌で実店舗を持ちながらも何故か間借り営業もしているという
「のんびりスパイス酒場harappi」の3店舗がコラボ営業をするイベントが6月にありました。
今回の間借りカレーdigging’は大阪、東京、北海道でそれぞれ間借りカレー店を営業しているお三方にお話しを聞いてきました。
まずそのお話をする前にそれぞれのお店をご紹介しましょう。
・堕天使かっきー
大阪は阿倍野の青空食堂という小さな小さな立飲み屋を間借り。和の食材をメインに使った独創的すぎるカレーは全国にファンを持ち、唯一無二のカレーを生み出しているお店です。
例えばある日のカレーは「ブルースリーカレー」と題されたもの。何のことかと思えば青魚3種を使用したカレーでした。
イワシとクジラのカレー。サンマとあん肝の坦々風カレー。サバのビンダルダルぬた風。これに合わせるご飯も牡蠣と青海苔を使った炊き込みご飯。どんな味がするのか文章にしようにも筆舌に尽くしがたい味とはまさにこのこと。
「よくわからないけどとにかく美味しい!」という気持ちにさせてくれます。
現在は同じく阿倍野のモヌメントというバーも間借りし、そこで仕込みの行程を見せながらカレーに至る前の料理から提供。最終的にカレーも提供するという非常に興味深い営業もしています。
全国でイベント出店、そして様々なお店ともコラボ営業も精力的にしている、間借りカレー界の異端児にして代表的存在とも言えましょう。
・ラナンクルス
新宿歌舞伎町の外れにあるマダンテというホストクラブ的なバーを間借り。埼玉大宮の名店「紅茶屋さん」で学んだスリランカ料理と、ミシュランビブグルマン獲得店で大阪カレーを代表する存在のひとつである「虹の仏」で学んだ大阪出汁カレーのハイブリッドというスタイルで、コロナ禍の開店でありながら今や連日完売の人気店。じわじわと常連を増やし続けています
メニューは出汁キーマと出汁パリップをメインとし、日替わりのスリランカ副菜がまわりを彩るカレープレート。これに最近では気まぐれカレーも登場し、自由な発想で作るカレーはどれも美味しく、食べに行く度に成長を感じる要注目店です。
・のんびりスパイス酒場harappi
テキーラを中心としたバー。フードのメインはカレーとスパイス料理。シェフご自身が全国各地で食べ歩いたカレーを自分なりに解釈し、再構築したカレーは、それぞれリスペクト精神を感じさせつつもちゃんとオリジナルの味に仕上げているのが素晴らしいです。
ある日のカレーはパキスタン風チキンカレーとラムカシミールカレー。パキスタン風チキンは最近全国的に増えてきている「無水チキン」の元祖である神奈川のサリサリカリー、さらに言えばそのサリサリの源流にある北海道のカラバトカリーをイメージさせるもの。
カラバトよりサリサリ的な濃厚な仕上がりで美味しいです。ラムカシミールも老舗超有名店であるデリーとそこから派生したお店の看板メニューとしておなじみのカシミール。具材がラムというのが北海道的であり、これも独自解釈のカシミールで確かにカシミール的でありながらもオリジナルの美味しさになっていました。
札幌でスパイス飲みをするならここがおすすめです。
というわけで簡単に3店舗、ご紹介したところで、ここからは私カレーおじさん\(^o^)/とお三方のクロストークをまとめます。
カレーおじさん\(^o^)/(以下、カ):まず最初に各地の間借りカレー事情について聞きたいんですが、大阪の間借りカレー界は今どんな感じですか?
堕天使かっきー(以下、堕):相変わらず盛り上がってるし、お店も増え続けてますね。
カ:既にめちゃくちゃお店あるのに、さらにですか?
堕:そうですね。もちろん閉店したお店もあるんやけど、コロナで通常営業できなくなったお店もあったりで、その分間借りが増えてきた印象はあります。
カ:なるほど。増えてきているお店はどんなカレーが流行っているんですか?
堕:やっぱり創作系というか、大阪的な出汁カレーが多いように思います。「鯛出汁」とか、よく見ますよ。
カ:鯛出汁と言えばかっきーの代名詞的な出汁カレーじゃないですか。あとはベジンとか、そのあたりのお店が数年前からやってるカレーのインスパイア的なのが増えてきたということですか?
堕:実際全部食べに行ってるわけやないのでインスパイアかどうかはわからへんけど、言葉としてよく使われてるなというのは思いますね。
カ:確かに創作系や大阪的な和を感じさせる出汁カレーは、僕も先月大阪に仕事で行った時に増えているなと感じましたし、レベルも高いですよね。では札幌の間借り事情はどうですか?
のんびりスパイス酒場harappi(以下、ハ):数年前までは全然なかったんですが、最近はちょくちょく見かけるようになりましたね。
カ:ではやはり札幌でも増えてきていると。どんなきっかけで増えてきたかわかりますか?
ハ:やっぱりかっきーやカレーおじさん\(^o^)/がTVなどで間借りカレーというものがあるよと知らせてくれてるのを見て、少しずつ気づいて始める人がいるんだと思うんですよ。
堕:っていうかハラッピが広めた的な部分もあると思いますよ。だってハラッピ、僕が彼と出会った時、自分で実店舗持って営業してるのに曜日限定で他のお店で間借りカレーやってたんやからマジで意味わからん(笑)
カ:なんでそんなことしてたんですか?
ハ:あぁ、やっぱりそれは間借りカレーっていうものがあるんだぞって、当時の札幌では全然知られていなかったので、間借りカレーという文化と、スパイスカレーという文化をもっと広めたいなと思ってやってみたんですよ。当時スープカレーばっかりでしたから。
カ:それは凄い! 今もスープカレーは確かに圧倒的な数ですが、今回北海道にいて思ったのはスパイスカレーだったり、現地系のカレーだったり、他のカレーも増えてきているなということです。そういう間借りのお店もあるんですか?
ハ:ありますよ。ビリヤニ専門の間借りのお店だったりとか。しかもレベル高いんですよ。もちろんスープカレーもあるしスパイスカレーもあるんですが、色々な種類のお店を見るようになってきました。
堕:あとね、ハラッピ、ちょっと前まで間借りでラーメン出してたんですよ。
カ:え? 何でですか?
ハ:いや、ラーメンも好きなので。
堕:いやいやいや(笑) こいつね、ほんとこういうとこ頭おかしいんですわ。だからこそおもろい料理作れるんですけど。
カ:とにかく、札幌でも少しずつ間借りカレーは増えてきていて、なんならラーメンとかカレー以外もあるし、カレーの種類も多種多様ということですね。面白いです。東京の間借りカレーも現地系の本格的なカレーを出す人が少しずつ増えていて、やっぱりレベル高いんですよ。現地系と創作系をある意味ミックスさせて営業してるラナンクルスさんは東京間借り事情について何かありますか?
ラナンクルス(以下、ラ):私は全然詳しくないので何が流行っているかとかわからないんですが、うちの場合は間借り先のお店が特殊なので、それについての話なら色々ありますよ。
堕:それ聞きたい! ホストクラブやったっけ?
ラ:正確にはホストクラブではなく、ホストクラブも運営している会社の経営しているバーなんですよ。まぁここでは言えないことだらけなので、いつかどこかでお話できる機会があればと思います。うふふ。
そんなお三方のコラボしたカレーは非常に個性的な美味しさでした。詳細は情報量がありすぎるので画像をご覧ください。
とにかくどのお店も北海道でとれた具材を使用し、北海道だからこその料理であり、カレーとなっていたのが面白いところです。
異色に見えて食べてみれば安心できる美味しさであり、興味深い一皿となっていました。
イベントには北海道のカレー好きが集まり、ご自身でカレーのお店を営業しているシェフの来客が多かったのも印象的。横のつながりがしっかりとあって、刺激しあって切磋琢磨しているのだなと感じました。
カ:こういうイベントが気兼ねなくできるご時世が早く戻ってくると良いですね。
堕:そうですね。全国各地でカレー作りたい!
ハ:僕も東京や大阪行きたいですよ。
堕:なら一緒にやろうや! 俺もホストクラブでカレー作りたい!
ラ:うちでですか? 一緒にやります?
堕:やろうや! ハラッピも一緒に!
ハ:良いですね。
ラ:わーい! 楽しくなりますね!
- イベントのメニュー
東京はもう何度目になるか数えたくないくらいの緊急事態宣言が発令されました。
飲食業界は大打撃を受け続けています。
日本が世界に誇る文化にも様々なものがありますが、中でも料理のレベルの高さは世界でもトップクラスだと感じています。東京は世界に誇る食の都であり、大阪は食いだおれの街であり、札幌は素材のレベルが非常に高い北海道だからこその美味しいものが溢れた街です。充実した食文化を失速させない為には、様々な形で飲食の楽しさを伝える機会が増えていかないといけません。
今回のイベントも人数制限あり、テイクアウトも用意、予約限定の入れ替え制ということで対策をしっかりとった上での開催でした。
店舗営業がままならないご時世だからこそ、ある程度フレキシブルに動ける間借りスタイルのお店は、飲食の楽しさを伝えられる存在だとも言えるでしょう。
もちろん感染対策は入念にせねばなりませんが、その上でできることをやっていくべきだとも再確認させてくれるイベントでした。
- カレーおじさん\(^o^)/
2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレー偏愛家。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!
間借りカレーdiggin’ 第一回
間借りカレーdiggin’ 第二回
間借りカレーdiggin’ 第三回