【めちゃめちゃ働いてきた】だからこそ言えるラナンクルス店主「もっと美味しいものを食べて」

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店主の五十嵐さん
新宿歌舞伎町のホストクラブ的な場所で間借りカレー店としてスタートし、その場所もさることながら味のレベルの高さや独創性で人気となったラナンクルス。その後新宿界隈で移転を繰り返していましたが2025年7月16日、落合駅近くでついに独立実店舗オープンとなりました。 昼はカレープレート、夜はスパイス料理とおつまみとお酒、そしてどちらの時間もこだわりの紅茶を味わえるお店です。
ある日のカレープレートはゴラカポークと鴨アオモジの2種に定番の出汁パリップをはじめ様々な副菜が乗るスリランカスタイルのワンプレート。料理もそれぞれスリランカ料理を基本としたものが多いのですが、そこに大阪スパイスカレー的な楽しい工夫が加わるのは店主の五十嵐さんが埼玉の名店「紅茶屋さん」と大阪の名店「虹の仏」で師事した経験があるからこそ。
また、ある日の夜は金華サバのみそカレーをおつまみスタイルで、カツオとプラムのヤムにつくば鶏のピックルを台湾の蜜香紅茶と共に楽しみました。どれもレベルが高いのですが特にピックルは自家製の青唐辛子の酢漬けを使用し、ジンブーの香りも印象的で他にない自由なピックルとなっていて楽しさと美味しさが共存していました。

今回はラナンクルス店主の五十嵐さんに色々なお話を聞いてきました。

・カレーおじさん\(^o^)/(以降「カ」と表記):まずは改めて実店舗開店おめでとうございます! 営業スタートして3ヶ月ほど経ちましたが間借り時代と一番違う点はどんなところですか?
・ラナンクルス五十嵐さん(以降「ラ」と表記):時間に追われないということですね。間借り時代は仕込みできる時間も限られていましたし何かと体力を奪われましたが、今は自分の好きな時間に厨房を使えることもあってとても楽になりました。
カ:元々IT企業の社員をしながら間借りカレー店を営んでいたわけですが、今はどんな状況ですか?
ラ:今は業務委託という形に変わりましたが仕事は続けています。間借り時代は本業がITで副業がカレーだったのが、本業がカレーで副業がITになった形です。今も厨房にPC置いてあってフルリモートで仕事しているんですよ。
カ:それは大変ですね! でも自分のペースでできるようになっただけ以前よりは良いということですね。その働き方になった経緯を教えてください。
ラ:はい。私の場合は元々アパレルからスタートしたものの休みもなく身体を壊してしまい、立っているのが辛くなったので座ってできる仕事をと考えてゲーム会社に就職したんですが、今度は接待を受ける側になって日々飲まないといけない状況になり、また身体を壊してしまって退社することになりました。そのゲーム会社でお世話になった方が既に独立されていて、私が体調崩したのを聞いて「うちでゆっくり働かない?」と声をかけてくれて、リハビリ状態で仕事させてもらったのがIT系の企業です。
カ:そんな中で間借りカレーを始めようと思ったのはどういう経緯ですか?
ラ:だいぶ元気になって普通に働けるようになったところで、社長が「何か好きなことやりなよ」と言ってくれて、何だろうと考えた時に自分の体調を良くしてくれた料理を仕事にしてみたいと思ったんです。昔は毎晩お酒とお肉という海賊のような生活だったんですが(笑)、体調崩してから野菜やスパイスをとるようにしたら回復する実感があって、料理を習いに行ったりお店のお手伝いをするようになり、自分でもお店をやってみたいと考えました。
カ:それであの伝説の歌舞伎町ホストクラブで間借りカレー店がスタートしたんですね(笑) その後も歌舞伎町の怪しげなビルの会員制バーの間借りだったり、新宿界隈で移転を繰り返していましたがどのように間貸し先のお店と出会ったのですか?
ラ:私はアパレル、ゲーム会社、そして飲食関係と、色々やってきたからこそ色んな方とのつながりができて、全部友人知人からの紹介なんです。
カ:色々やってきたからこそのつながりですね。そして今も色々とやっていると。最近はワークライフバランスなんて言葉も話題になりましたが、それについてはどう思いますか?
ラ:私は好きな事ばっかりやっているように見られるんですが、まぁ実際好きな事をやってはいるんですけども、今に至るまでにはめちゃめちゃ働いてきた経験があるんです。ろくに働きもしてない人が雇われの身で休み増やせって言ってもそれは違うと思っていて。
カ:ですよね。僕も好きな事を仕事にしているからこそずーっと仕事していると言えばそうなんですが、そもそもワークとライフが別ものではなく、ワークイコールライフなのでバランスも何も無いよという感覚です。実は今日も本業が2週間ぶりの休みだったんですが暇なので副業のカレー業をしようということでここに取材に来ちゃったくらいで(笑)
ラ:でも私達のようなタイプは少数派ですよね。それは自覚しているんですが、そういう人にも優しい村を作りたいというのが私の最終的な目標なんです。
カ:と、言いますと?
ラ:世間では仕事ができないと思われている人にも意外な特技があったりするじゃないですか。そういう人達が助け合って暮らせる村があったら良いなって。実はそれも飲食店を始めた理由でもあって、飲食店をやっているとランダムに色々な人と出会えるので、マインドの合う人達と交流を深めていって、私は動物も好きなので、どこか自然の中で動物と少数派に優しい村を作る時の住人になって欲しいなって思っています。
カ:壮大な夢ですね! でも不思議と実現しそうな気もします。
ラ:この話を聞いて楽しそうって思ってくれた人は是非お店に食べに来て欲しいです。
カ:最後に、間借りカレー店を始めようと思っている方に一言お願いします。
ラ:もっと美味しいものを食べてください! これにつきます。カレーはもちろんそれ以外の料理でも、本当に美味しいものを食べていないと本当に美味しいものは作れないと思っているので。
カ:わかります! 家庭料理ばかり食べている人には美味しいと思っても、それは家庭料理レベルで美味しいだけでプロの料理と比べると確実にレベルが低いという場合も多々ありますし、友達に食べさせて美味しいと言われたからと勢いで間借りカレー店始める人もいますが、そんなお店の多くは続きませんから。めちゃめちゃ美味しいものを食べて自分にはこんなの作れないと凹んで欲しいですね。そこからどうすれば作れるようになるのかと創意工夫をして欲しいです。 終始楽しそうに話してくれた五十嵐さん。本業に副業に旦那さんの仕事のお手伝いもあって本当に多忙な日々かと思いますが、だからこそ充実していて、そこから生まれる笑顔なのだろうなと感じました。

休日に間借りカレーをやってみたいけど、ワークライフバランスを考えてやめておこうと思っている方もいるでしょう。そういう方は結局のところ情熱がそこまで無いのでそうなっているのでしょうからそのままで良いです。本当にやりたかったらそんな事は考えずやり始めているはずですから。

店舗情報

※店内は料理以外写真撮影禁止です(今回、取材で特別に許可を得ました)
【店 名 】 ラナンクルス
【住 所 】 東京都中野区東中野4丁目26−12 佐藤ビル
【営業時間】 (夜)水木金17:30-22:00 (昼)金土日12:00-14:30 土日18:00迄
【定 休 日 】 月火休み+不定休
【インスタグラム】https://www.instagram.com/ranunculs_spice/

カレーおじさん\(^O^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!