【食べログアワード受賞シェフ】「カレー独歩ちゃん」が秩父の山で間借りカレー店として再スタート

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久遠独歩シェフ
間借りカレー店は独立前のテスト営業的な形で新人シェフが営業していることが多いのですが、今回紹介するのは食べログアワードも受賞したことのある名店のベテランシェフが、ご自分のお店を閉めた後に地方で間借りカレー店として再スタートしたといかなりレアなケース。埼玉県は横瀬で毎週火曜に営業している「カレー独歩ちゃん」です。
そもそも独歩ちゃんのシェフ久遠独歩さんは、割烹からスタートしてイタリアンやバー、寿司、天ぷらなど様々な料理店で修行の後、中野でもつ焼きのお店「久遠の空」を開業。こちらのお店が食べログアワードで受賞するほどの人気店となり、もつ焼きの世界では知らない人はいないという程の名店でした。しかしこちらがコロナ禍に入って夜営業ができなくなり、昼に二毛作的にカレー店「カレー独歩ちゃん」を開業。同時期に秩父の山の中に移住し、山で採れた野草を使ったオンリーワンの絶品カレーを出し、カレー業界もざわつかせたシェフなのです。 横瀬駅から徒歩10分少々、西武秩父駅からも20分はかからないかという位置にお店はありました。大金星というラーメン店の間借り営業です。
カレーは「毎回ちがうカレーセット」と題されたもの。この日のカレーは秩父こんにゃくとひき肉のカレー、平茸しめじと舞茸のカレーのあいがけに、スパイシーひじき、フキノトウとイチゴ和え、菜花アンチョビなど、様々な副菜が乗ったもの。カラフルであり野菜たっぷりで、見た目にも健康にも良く、さらに美味しいという素晴らしい一皿。 特に食材の美味しさを前面に押し出した味付けとスパイス使いであり、カレーはこんにゃくの風味がしっかりと活きており、きのこ自体の味の強さが感じられるという他にないカレー。副菜もそれぞれ素材の味がしっかりと立っていてしみじみ美味しい。この自由さと変幻自在さは、様々な料理を修行してきたベテランシェフならでは。
食後にチャイチーズケーキもいただきました。チャイのようにシナモンやカルダモンが感じられるチーズケーキにデュカという中東のスパイスミックスがかかるという面白さ。チーズケーキだけ食べてみても十分美味しいのですが、デュカが加わるとさらにその美味しさに掛け算が生まれます。
相変わらずの独歩ちゃんワールドを堪能することができました。

今回は何故横瀬で間借りをスタートしたのか色々とお話を聞いてきました。

カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記):独歩ちゃんについては料理もそうですが経歴から何から情報量が多すぎてどこから聞けば良いのか悩みます(笑)
カレー独歩ちゃん久遠独歩さん(以下「独」と表記):ですよね(笑)
カ:まずは何故中野のお店を閉めてこちらで間借りをスタートしたのか聞かせてもらえますか?
独:はい。中野のお店は15年続けてましたから思い入れもあったんですが、コロナ禍に入ったこともあってか大家さんからもう飲食はやりたくないと言われまして、そういうことなら仕方ないなと、閉めるつもりは無かったんですが仕方なく閉めたんですよ。スケルトンで返さなきゃいけなくてかなりのお金もかかったんですが、いざお店を閉めたらその場所が飲食以外では借り手がつかなかったみたいで、結局後にはカレー屋さんが入ることになったようで複雑です(笑)
カ:えー!? 間借りではよくそういうトラブル的なことも聞きますが、長年借りていたお店でもそんなことあるんですね。
独:僕もびっくりしてるんですけどね、コロナで考え方が変わっちゃったのかなぁ。大家さんのその日の気分で色々と言われる事も変わることも結構あって、僕自身疲れちゃったのもあるんで、こうなるべくしてなったのかなとは思ってますけど、でもやっぱり複雑です(笑)
カ:それは複雑ですよね。そこからこちらの間借りになったのはどういう経緯ですか?
独:そもそも中野のお店をやりながら、家はこっちに移住していたのもあって中野は不定期営業だったりもしたんですが、同時にこちらで「野外独歩ちゃん」として料理教室をしたり、山で野草を採ったりという活動もしていました。また、秩父エリアのお店とコラボ営業もしてまして。そもそも僕が最初にカレーを出したのは独歩ちゃんの前で、秩父ウイスキー祭りでのイベント出店が最初だったという事もあって、もう自然とこっちに動きが向いてきた感じです。ここのラーメン屋さんも、僕自身食べに行ってたお店であり、店主さんが僕の料理教室も来てくれたりして、コラボ営業もした事もあり、そういう流れでスタートしました。僕は横瀬に住んでいるんですが、本当にこの街には色々とお世話になっているので、横瀬でお店をやりたいというのも理由としてありましたね。
カ:なるほど。様々な活動の中で、自然とこの地にたどり着いたという事ですね。それにしても場所も場所ですし、東京で営業するのとは違う苦労もあると思うのですが、営業してみて感じたことがあれば教えてください。
独:やっぱりスパイスに対する理解度が低いというのが一番苦戦しているところです。ラーメン屋さんの間借りという事もあって、ラーメン屋さんだと思って入ってくるお客さんも結構いて「今日は間借り営業なのでラーメンはなくカレーだけです」と説明すると「ならカレーでいいよ」と食べていってくれる方もいるんですが、僕の料理人生でこんなに残されたことはないってくらい残されたんですよ。
カ:なるほど。確かに普通の家庭的なカレーしか知らない人にとっては独歩ちゃんのカレーはもはや別の料理ですもんね。何も考えずに食べれば確実に美味しいはずなんだけど、おうちカレーのイメージで食べるとあまりに違いすぎて残してしまうというのもわからなくはないです。
独:そうなんです。なので説明の仕方とかも考えてます。この苦さはスパイスの味なんだよとか、この酸っぱさがあるから全体の味が引き締まるんだよとか、説明するようにしてからは残す人は少なくなったんですが、そういう意味でもスパイスを教えるところから始めないといけないなと思って、地域の方にスパイスに慣れてもらうよう試行錯誤してます。だから東京でやっていたような野草カレーはこのお店ではしばらく封印して、もっと地域の方に親しみのある食材を使って料理を作ったり。でも、これもね、全部楽しいんですよ!
カ:流石です! この美味しさなら時間はかかっても確実に理解されますよ。実際もう常連さんもいるんですよね。
独:そうですね。女性が多いかな。ほとんどインスタでの活動報告だけなんで、インスタで気づいて食べに来てくれる女性が多いです。あとは他店とのコラボで知ってくれた方とか。それと、埼玉で間借りやキッチンカーでカレーの営業をしている方が食べに来てくれることも多いんですよ。東京からだと2時間かかる場所ですが、埼玉なら1時間で来れるので、その分多いのかもしれません。
カ:プロがわざわざ食べにくるということですね。まずはそういうところからシーンがスタートすると良いですね。
独:はい。横の線が繋がりつつあるので、あとはそれに厚みが出てきたら良いなと考えています。
カ:これから特にやりたいことや考えていることってありますか?
独:はい。横瀬をね、スパイスで町おこしできればって思ってるんですよ。自分でスパイスやハーブを育てて、横瀬でできたスパイスやハーブでカレーを作るって楽しいじゃないですか。スパイス村を作りたいんです!
カ:それは楽しいですね!
独:その為にもまずはここから、地域の方にカレーやスパイスを楽しんでもらいたいし、東京の方にも食べに来て欲しいです。秩父や横瀬の美味しいものを知って欲しいです。
カ:ですね。中野でやっていた時とはまた違う魅力を感じました。とにかくお元気そうで良かった! 終始笑顔で様々なお話をしてくれたシェフ。文字数の都合もあって全てをここに書ききれなかったのですが面白い話ばかり。相当大変なこともあったかと思うのですがそれでも笑顔なのは、長年飲食業を営んできて確固たる評価もなされた名人だからこその自信と、自由に料理と人生を楽しんでいるこそだなということが感じられて刺激を受けました。
ここにしか無い料理が味わえます。そして、色々と面白い話も聞けます。気になった方は是非行ってみてください。わざわざ行って損が無い以上に、得るものが多いですから。

店舗情報

店舗名   カレー独歩ちゃん
住 所   埼玉県秩父郡横瀬町横瀬4278-1らぁ麺 大金星内
横瀬駅より徒歩10分※駐車場9台有り
営業時間   毎週火曜日10:30〜売り切れ終い
(詳細はSNSをご覧下さい)
Instagram :https://www.instagram.com/curry_doppo/

カレーおじさん\(^O^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに! https://share-restaurant.biz/