元々こちらは石垣島で業態や店名を少しずつ変えながら最終的には「ビストロスマイル」として人気となり、16年続いたお店。僕自身石垣島時代からのファンなのですが、石垣島にお店を構えながら同時に新橋で「石垣島カレー南風(ぱいかじ)」として1年半の間借り営業を経て、今年8月に石垣島のビストロスマイルと新橋の南風が統合移転という形で市ヶ谷で「スパイス欧風カレー PAIKAJI」と生まれ変わったという経緯があります。
こちらのカレーは店名にあるとおりスパイス欧風カレーというスパイスカレーと欧風カレーの良いところどり。スパイスカレーのようにグルテンフリーでヘルシーですが旨味やコクは欧風カレーに近く、スパイスカレー好きにも欧風カレー好きにも好かれる味です。 今回はハンバーグカレー160gにチーズトッピングでいただきました。
フルーティーでスパイシーなカレーはピパーツという石垣島を代表するスパイスが使われています。このピパーツ自体も胡椒の仲間ですがフルーティーさのある香辛料。そして何より特徴なのはフォン。
最初に「ぬちぐすい」(沖縄の方言で「命の薬」という意味)としてこのフォンを味わえるサービスも嬉しく、手間ひまかけてとったフォンだからこその深い美味しさとなっています。
ハンバーグもビストロ時代からの人気の逸品。ご飯少なめにすると野菜多めにしてくれるサービスも非常に嬉しいです。
豚のリエットはクラッカー乗せで良いおつまみ。
食後のデザート盛はかぼちゃのテリーヌと石垣島はちみつアイス。どちらも自家製というこだわりで世界最古のホットコーヒーがよく合います。
今回も大満足のディナーとなりました。そんなPAIKAJIの戸塚さんご夫妻に色々とお話をうかがってきました。本記事は特に地方から東京進出を狙っている飲食店の方必見の内容となっていると思いますよ。
PAIKAJIオーナーシェフ戸塚勝敏さん(以下「勝」と表記):最初は京都で和食を3年、その後石垣島の全日空ホテルで10年洋食メインで宴会料理などもやっていました。その中でフォンやブイヨンなど出汁担当だったんです。
カ:その経験がまさに今につながっているのですね。そこから独立してお二人でお店を構えて16年。その最後の1年半は石垣島でお店をやりながら新橋で間借りもしていて大変だったかと思うのですがいかがですか?
PAIKAJIスタッフ戸塚泰子さん(以下「泰」と表記):楽しかったんですよ!
カ:おお、それは素晴らしい。
泰:新橋開店時はしばらく私が新橋のお店に立っていてスタッフの育成などもしていました。カレーは石垣島から送ってもらったのを湯煎して提供する形をとっていました。
勝:石垣島の店の厨房が冷凍食品の製造販売許可をとっていたので、石垣島の厨房で一食ずつ真空パックしたものを冷凍し、東京へ送っていました。大変な部分もありましたが、東京の反応が嬉しかったこともあって、やって良かったなと思います。
カ:その成功もあってここに統合移転という形になったかと思うのですが、東京進出は狙っていたのですか?
泰:はい。カレーおじさん\(^o^)/が石垣島のお店に食べに来てくれた時にお話ししていた「東京は欧風カレーが強い」という言葉がずっと頭の中にあって、いつか東京でカレーで勝負したいなという思いがありました。そんな中で東京でイベント出店の話がありまして、行ってみるとお客様から欧風カレーが好きなんだという声をたくさんいただいて、東京でお店をやりたいと思ったのですが人脈も何もない状態からだったのと、最初から実店舗ではなくテスト営業的に試してみたいという思いがあり、調べていく中でシェアレストランと出会い、新橋のお店で間借り営業をスタートできることになりました。
勝:シェアレストランの方に新橋駅前ビル内で1400円、1700円という価格は厳しいと助言もいただいたんですが、それ以上下げてしまうと儲けが出ないのと、この価格で結果が出なければそれは東京に合わないことだろうからダメなら撤退すれば良いと考え、あのエリアの店としては高価格でしたがそのまま営業しました。
泰:契約も1ヶ月ごとだったんで思い切ることができたんです。確かに高いと言われることもありましたが、ちゃんと価値を理解してくださるお客様も増えて、最終的には席が埋まるようになりましたし、東京の客層の性質というか雰囲気も情報としてだけではなく実際の結果として体感できたので本当に良かったです。地方で東京進出を狙っている人ほど間借りをやってみると良いと思いますよ!
カ:確かにテスト営業としてリアルな数字が出ますものね。そして実際PAIKAJIのカレーはこれだけ手間ひまかけて良い素材使ってこの値段なら安いくらいだと思います。コスパの本当の意味を理解していない方が少なからずいるなと常々考えています。
勝:ありがとうございます!
カ:場所は新橋から市ヶ谷に変わりましたが、いかがですか?
泰:最初は新橋で出店を狙っていんですが諸条件がなかなか難しくて、エリア広げて探して市ヶ谷でご縁があったんですが、結果的にとても気に入っています。市ヶ谷エリアは昼はサラリーマンの方メインで夜がどうかなと思っていたんですが、近所の方が少しずつ来てくれるようになっていますし、週末になると都内の色々な場所からカレーマニアの方がわざわざ食べに来てくれるんです。
カ:確かに東京のカレーマニアは気になるお店があったらどの場所であろうとフットワーク軽く食べに行きますものね。石垣島はリゾート地ですし、客層は確かに全然違うでしょうね。
勝:はい。まだオープンして4ヶ月なので、着実に常連さんを増やしていきたいなと思っています。気になっていただけた方は是非食べに来てほしいですね。
泰:年内は大晦日まで営業予定なので年末のカレーに困ったら是非いらしてください。それと、私達のように地方で飲食店を営業していて都内進出を狙っている方は、本当に思い切って間借り営業してみた方が良いと思います。地方にいても間借りのイメージがわきにくいかと思うんですが、やってみてわかることも多いです。逆にシェアレストランさんが地方に向けて宣伝した方が良いと思いますよ! 私達が成功例としてお手伝いしますので(笑)
間借り営業は間借り先にもよりますが、短期契約であることが多いので短期集中で実際のリアクションを感じる事もできます。もちろん大変なことはつきまとうと思いますが、今回ご紹介したPAIKAJIさんのように結果につながったお店もあります。しっかり新橋でお客さんをつかんだからこそ都内においても最初から安定感あるスタートが切れているのでしょう。
間借りうんぬん関係なく、PAIKAJIは本当に美味しいお店ですのでカレー好きの皆さんは是非一度食べに行ってみてください。
来年も戸塚さんご夫婦のように、笑顔でお店を運営できる方が増えたら良いなと思います。
店舗情報
【営業時間】11:30〜15:00/18:00〜21:30
【定休日】日曜日
インスタグラム https://www.instagram.com/paikaji_ichigaya/
カレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!