コロナ禍だからこそ間借りという身軽な形式が状況に合っている部分もあり、この2年程で間借りカレーのお店も飛躍的に増えてきています。既に玉石混淆の状態であり、美味しいお店もあれば正直残念なお店も少なくありません。そしてこれは間借りカレー同様、スパイスカレーについても言えること。スパイスカレーのお店も間借りカレー同様飛躍的に増え、見た目はそれなりに綺麗なのですが食べてみると残念と思うお店が少なからず出てきています。
そんな中、間借りカレーでありスパイスカレーなのですが、ここは頭一つ抜きんでたレベルだと感じて気に入っているお店があります。東京駅近くの「酒とスパイス マツコ」です。
店主の通称マツコさんは飲食歴15年の中堅シェフ。様々なジャンルの飲食店で修業を積み、カレーレベルの高い福岡でも間借りカレー店を営んでいた方です。今回はそんなマツコさんにお話をうかがってきました。
カレーおじさん\(^o^)/(以下、カ):マツコさんが間借りカレーを営むきっかけをうかがいたいんですが、その前にまず料理人としての遍歴をうかがった方がわかりやすいですかね。
マツコ(以下、マ):そうですね。東京に出てきて最初にイタリアンのお店を3年半、その後カレーとスパイスのお店で2年、日本酒と和食のお店で6年勤めまして、30歳になった時に一度地元の福岡で飲食店をやってみたいと思い、福岡に行って間借りカレーのお店を1年ほどやっていました。そしてまた東京に戻ってきて、ここでの営業が1年ちょっとになるのですが、他の飲食店と兼業でやっている時期も結構あるんです。
カ:それは大変ですね。しかしなぜ飲食店で仕事をしながら別でまたご自分で間借りカレーのお店をやろうと思ったのですか?
マ:私の場合は独立してカレーと日本酒のお店を出したいというのが以前からありまして、まだ資金的にそれができないのですがカレーもスタートさせたいと思い、間借りなら資金面で初期投資が少なくて済むので独立の準備として始めました。
内観
カ:はじめてみてどうですか? 良い事も大変な事もどちらもあると思うのですが。
マ:そうですね。まず良い事は、頭の中のイメージだけでなく実際にお客さんに出すことによってリアルな感想がいただけるということがあります。自分ではこれが受けるかなと思って出してみても意外とそうじゃなかったり、自分では思いもよらないものが受けたりと、実践の中でその答えをもらえるというのがとても良いと思います。大変なことは、仕事しながら間借りということで仕込みの時間考えると休んでいる暇がないということと、間借りなので毎回荷物の移動が大きいということですかね。
マツコさん
カ:そうですよね。ちょっと話が前後しますが、そもそも間借りカレーのお店を始めようと思ったのはどんなきっかけだったのでしょうか?
マ:間借りから独立するという過程に興味があったんです。それで福岡に戻った時に間借りカレーのお店を手伝いまして、現場でそれを見ようと。その後自分でも間借りカレーのお店を福岡でスタートして、東京でもそれをやろうということでこちらのお店がはじまりました。
そんなところでカレーが出てきました。酒とスパイス マツコのカレーは基本的に日替わりのあいがけというスタイルです。行く度にメニューが変わるというのも凄いことですが、その全てが美味しいという凄まじさがあります。
この日のメニューは「やげん軟骨とマッシュルームのグレイビー&ラムトマトキーマ」。これにスパイスたまごをトッピングしていただきました。軟骨の歯ごたえとマッシュルームの食感が楽しく、マイルドながら奥底にしっかりとスパイスを感じるグレイビー。ラムトマトキーマはカルダモンが華やかに香り、ラムですが非常に優しい口当たりなので羊が苦手な方でもいけそうな美味しさ。
スパイスたまごは火入れが絶妙で、割るとトロっとした黄味が流れ出るのがたまりません。このトッピングはどのカレーとの相性も良いので必須です。
スパイスたまご
カ:いやー、今日も美味しいです。それにしても毎回メニュー違うって凄いですよね。開店から今まででもう100種類以上ありますよね? それだけの種類のカレーのアイディアって、どういうところから生まれるんですか?
マ:基本となるレシピはいくつかあって、それに何を加えるかとか、どう変えていくかという形なんですが、何か他の料理を食べてそれをカレーにしたらどうなるかと考えて作ることもあります。例えば牛肉の料理に人参のグラッセがついているものを食べた時は、ビーフカレーと人参のポタージュカレーのあいがけにしてみたりとかしましたね。
カ:面白いですね! でもそういうちょっと珍しいというか、突飛に見えるカレーでもちゃんと美味しいのがマツコさんの凄いところだと思っているんですが、やはりそれは基礎がしっかりしているからなんでしょうか?
マ:そうだと思います。ずっと飲食店で働いてきているので、色々な料理の基礎がわかってきました。それをわかった上で作るのと、わからないまま作るのではやはり仕上がりは変わってくると思います。
カ:ですよね。料理の経験がほとんど無いまま間借りカレーを始める方も少なからずいて、だからこその面白さが生まれる場合ももちろんあるのですが、それは全体から見たら少数派で、やはり別の料理でも何でも基礎がしっかりある方が始めた間借りカレーの方がトータルで見たら美味しい確率が高くなっている気がします。
メニュー
今回の取材時は緊急事態宣言中ということもあり、日本酒の提供は無かったのですが、以前行った時には、その時いただいたカレーに合うお酒をお任せでお願いしたところ、日本酒の白ビール割りを出してくれて、今までに味わったことのない美味しさと、そのカレーとの相性の良さに驚きました。
今後お酒とスパイス料理のおつまみという組み合わせでも営業したいのですが、それはご時世が落ち着いてからのお楽しみにとっておきましょう。
日本酒の白ビール割り
カ:それでは最後に、これから間借りカレーを始めたいと思っている方に何かアドバイスをお願いします。
マ:私のように別で仕事しながら間借りをするとしたら、本当に忙しいので自分を見失うことがある思います。そんな時には一度休んででも、自分が本当にやりたいことは何だったのかしっかりと見極める時間を作ることが大事ですね。私の場合はとにかく独立して自分のお店を持ちたいというのが目標なので、忙しい中で色々見失いそうになった時は、それを思い出してまた組み立てなおすようにしています。
カ:ありがとうございます。マツコさんの独立と、マツコさんのお店でお酒が飲める日が一日でも早くくるように祈っていますね!
カレーレベルの高い福岡のマニアからも評価を得て、コロナ禍の中でスタートしたにも関わらず、東京のマニアや近隣のサラリーマンのファンを着実に増やしているお店です。営業日は不定期で、メニューも日替わりなので詳しくはお店のInstagramをチェックしてから行ってみてください。毎回確実に美味しいカレーがいただけるということ、僕が保証します!
店舗情報
外観
店舗名 酒とスパイスマツコ
住 所 東京都中央区日本橋2-2-15HASHI内
オープン日 2020年 8月11日
営業時間 11:30~14:30 数量限定!Instagramでのお取り置きが確実です。
営業日 火・木・金を基本に不定休につきInstagramをご確認ください。
https://www.instagram.com/matsuko.spice/
カレーおじさん\(^O^)/
カレーおじさん\(^O^)/
2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレー偏愛家。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!