23,000円の高級店を閉じても、料理だけは終わらせなかった韓国人料理人の再挑戦

「料理人を辞める」という選択肢もありました。
夢だった東京・白金台で、自身の店を構えた韓国人料理人ジョン・シイルさん。しかし、客単価23,000円の高級店という挑戦は、厳しい現実の前に幕を閉じました。それでも、包丁を置くことはありませんでした。
「この料理だけは終わらせたくない。」
その想いが、新たな挑戦へとつながります。『将太の寿司』が人生を変えた


作品に描かれた料理人の姿に憧れ、独学で日本語を習得して来日。
駒形の老舗鰻店「前川」、そして日本料理の名店「分とく山」で修業を重ね、日本料理の繊細な技術と四季を表現する感性を学びました。
修業を終えた後は故郷・釜山へ戻り、日韓創作料理店を開業。多くの支持を集める人気店へと成長させます。
しかし、料理人としての夢はまだ終わっていませんでした。
「いつか東京で、自分の料理を表現したい。」
その想いを胸に、再び日本へ渡ります。夢だった白金台。しかし現実は甘くなかった。



コース単価23,000円という高価格帯で勝負しました。
料理への評価は高く、「ここでしか食べられない」と言われる独創的な一皿を提供していました。
しかし、高級業態は料理だけでは続きません。
認知、集客、固定客づくり…。
料理の腕だけでは越えられない壁がありました。
店は閉店を迎えます。
諦めたのは店。諦めなかったのは料理。



変えたのは、営業スタイルです。
シェアレストランを利用し、武蔵小山で毎週火曜日だけ営業する8席限定の完全予約制へ。
予約人数分だけを仕込み、一皿一皿を丁寧に仕上げる。
大きな店ではできなかった営業スタイルを、小さな店だからこそ実現しました。
価格も23,000円から6,700円へ。
それは値下げではなく、「料理を続けるための再設計」でした。日韓ネオ割烹という新しい表現
ジョンさんの料理は、韓国料理でも日本料理でもありません。日本料理で磨いた出汁や包丁技術、韓国宮廷料理が持つ奥深い味わい、さらに現代的な感性を融合させた「日韓ネオ割烹」です。
例えば、
・下湯葉とトマト、オクラのガスパチョ 出汁仕立て
・焼き野菜と海鮮のカルパッチョ メロンのソース
・甘鯛のソテー 韓国風あおさ粥のソース
料理には、日本料理、韓国料理、フレンチ、それぞれの技法が自然に溶け込んでいます。
どれか一つのジャンルに収まらない、ジョンさんだけの表現です。
「小さく始めて、長く続ける」という選択
現在、日本では多くの飲食店が開業と閉店を繰り返しています。その背景には、高騰する家賃や人件費、初期投資の大きさがあります。
ジョンさんは、店を大きくすることではなく、「続けられるサイズ」に変えることを選びました。
毎週火曜日だけ。
8席だけ。
予約分だけ仕込む。
だからこそ、料理には一切妥協しません。
これは、シェアレストランだから実現できた新しい挑戦でもあります。
編集後記
「店を閉じること」と「料理を諦めること」は違う。ジョン・シイルさんの挑戦は、そのことを教えてくれました。
料理人として積み重ねてきた技術を守るために、店の形を変える。
大きく始めることだけが成功ではありません。
小さく始めて、長く続ける。
その選択が、これからの飲食業界に新しい可能性を示してくれるのではないでしょうか。
店舗情報

所在地:東京都目黒区目黒本町4-3-14 ミチノサキ6F 「&wine」内
営業日:毎週火曜日
営業時間:19:00~
席数:8席(完全予約制)
価格:12種コース 6,700円
https://www.instagram.com/siil4649/

































