間借りカレー店にも様々なスタイルがあります。昼間借り、夜間借り、週末間借りなどの他に、
セルフ間借りという言葉もあるくらい。セルフ間借りというのは自身の運営するお店のメインでは無い時間帯に別業態としてカレーのお店を展開するもので、正確に言えば間借りではなく二毛作なのですが「間借りカレー」という言葉が一般層にも認識されてきているからこそ、店舗側も間借りではないけれどそう思ってくれていても良いよと好意的に訂正しない場合も少なくありません。特に間借りカレーの最先端を行く大阪ではそのような雰囲気を感じることがしばしばあるのですが、今回ご紹介するのもまさに大阪は南森町駅近くのセルフ間借りカレー店「
カリクロ」。
大阪のカレーマニアの友人に「大阪でおすすめの間借りカレー店ある?」と聞いたら「セルフ間借りだけどここ良いよ」とすすめられ、チェックしていたお店です。
カリクロのオーナーシェフである黒居さんとは別のカレーのお店で偶然出会いました。僕も気に入っている天神橋筋六丁目駅近くにある「アイランドフィールド」というお店に食べに行った際に、良かったらカウンターどうぞと案内され、その際に紹介していただきました。
「カリクロの黒居です」とご挨拶いただき、「あ! いずれ行きたいと思ってBMしてました!」という流れ。縁を感じたので翌日食べに行きました。
「
大衆酒場ヤマホル」という居酒屋の昼が「
カリクロ」というカレー専門店となっています。
看板メニューのスパンキー麻婆カレーにエッグマサラをトッピングして注文。麻婆豆腐のカレー仕立てなのですが、麻と辣のバランスが良く、ライタがかかっているのかと思いきやタルタルソースだという意外性ある美味しさと楽しさ。付け合わせのダルやトッピングしたエッグマサラはオーセンティックなインド料理を感じる仕上がり。実にレベルが高いです。実は黒居さん、
元々はカレーマニアでカレー雑誌の審査員を勤めていたほど。そんな方が何故セルフ間借りという形でカレー店をスタートしたのか聞いてみました。
外観
カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記):元々カレーマニアだったそうですが、カレーにハマったきっかけと、そこからカレーのお店を出すまでの経緯を教えてください。
カリクロ黒居さん(以下「黒」と表記):元々会社員で食べ歩きブログを書いており、大阪のカシミールやバンブルビーのカレーを食べてカレーの世界に引き込まれ、カレーマニアになっていきました。色々食べ歩き、カレー屋さんと仲良くなる中で自分でも作りたいと思うようになり、会社を半年休業し、大阪市内にアパートを借りてカレー研究所としてひたすらカレー作りや勉強をしました。
カ:凄い行動力ですね! それだけカレー作りに可能性を感じたのでしょうか。
黒:はい。料理人やブロガー仲間に試食してもらうのを繰り返しているうちに、知り合いの飲食店から店でカレーイベントやってくれと依頼が来るようになりました。2011〜12年位だったので、まだスパイスカレーのお店も少なくて珍しかったのかと思います。会社員だったので、土日で色々な飲食店で出張間借りカレーをやるようになり、飲食業に転職しようと決意し、知り合いの飲食会社に入りました。
カ:遂にカレーが本業となったと。
黒:カレーというか、最初は居酒屋で色々と学び、全店舗の管理をするようになり、経営を学びました。その会社で初めてプロデュースさせて貰って立ち上げたのが北新地の林家です。
カ:スパンキー麻婆カレーがそこで生まれたわけですね。
黒:はい。その頃は他の店舗管理も忙しくカレー屋には立てなかったのでレシピ開発と管理の裏方でした。カレー作りはスタッフに任せていたので、日替わりは無理と考えて作り出したカレーがスパンキー麻婆カレーでした。思いの外好評でメディアで取り上げて頂き、お客様も多かったのですが店を任せてたスタッフがカレー屋で独立したいと申し出て、残念ながら一年ほどで閉店する事となってしまいました。
カ:そうでしたか。では続いてその後カリクロ出店までの経緯も教えてください。
黒:閉店後しばらくはカレーから遠ざかっていたのですが、やりたい事をやれてないなと思い、2020年2月で飲食会社を退職し、南森町の居酒屋と北新地の店舗を賃貸契約して独立しました。そして2020年3月に北新地の店舗にてカリクロを立ち上げましたが、コロナも同時に広がり始め、半年後に休業となりました。
カ:ということは元々は別の場所で実店舗としてカリクロがあったということなのですね。では現在のようにセルフ間借りという形にした理由を教えてください。
黒:コロナでカリクロを休業し、店舗やスタッフを守る為には、飲食業だけではしんどく、別業態の仕事もするようになったのですが、コロナも落ち着きカリクロ再スタートするにあたり、実店舗だと家賃など諸経費を賄う為には昼営業だけでは厳しいと思い、ヤマホルの昼を自分で間借りというスタイルにしました。そのおかげで、カレー屋を単独でやるより大きな店舗で多くお客様も来ていただけますし、昼営業後は別の仕事にも取り組めるので、様々な面でメリットは大きいと思います。
カ:実店舗を運営しているからこそでき、また体感できるメリットですね。大阪の間借りシーンの未来はどうなると思いますか?
黒:私的には間借りカレーができるのであれば、実店舗を構えるより、色々メリットがあるんじゃないかと思っています。カレー屋さんの数も物凄く増えてますし、実店舗をやるリスクをとるより、間借りカレーと別の仕事とかのが安心ですし。カレーはとにかく仕込みが物凄く多いので、心の不安がめちゃくちゃ料理に影響すると思います。無理しない方が、美味しいカレー作れますし、お客さんも来ると思いますね。
麻婆カレー
エッグマサラ、ダル
ご自分で複数店舗を運営しているからこそわかる間借りのメリットというのが印象的でした。そして金銭面のストレスを抱えるくらいなら間借りというスタンスの方が美味しいカレーができるという意見も興味深いものでした。
今も昔も間借りカレー最先端を行く大阪において、カレーマニアからカレー店主になったという立場だから言える意見の数々。間借りカレー店を営む、あるいは営もうとしている方々の参考になればと思います。
店舗情報
内観
カレーおじさん\(^O^)/
2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!