大阪と東京どちらでもカレーを作り、食べ、そして食べさせてきたシェフがいます。「
旧ヤム邸 」の下北沢店初代店主であり、その後下北沢でスパイスたこ焼きの店「
タコムマサラダイナー 」を開店し人気となったものの惜しまれつつ閉店。大阪に戻り東心斎橋のバーの間借りという形でスタートした「
コイチカレー 」の店主藤田さん(通称イチくん)です。
そのコイチカレーが夜営業もスタート。話を聞いてみるとどうやら同じ場所で独立店舗となったとのことで、夜に食べに行きつつ、色々なお話を聞いてきました。
外観
和泉屋バーという雰囲気のあるバー。そのままの形で営業しています。
昼はカレーライスのお店ですが夜はカレーのみならずおつまみも充実。
スパイスポテサラのマサラ玉子付きからスタート。かなりしっかりとスパイスを使ったほぼカレー味の濃厚ポテサラに、半熟のマサラ玉子。間違いない美味しさです。バイマックルーサワーも爽やかですいすいと進んでしまうドリンク。
スパイスポテサラ マサラ玉子付き
ブロッコリー素揚げは藤田さんによれば「東京ではスープカレーのお店でよく見ますが大阪では珍しいので驚かれるんですよ」と。サクサクに揚がったブロッコリーにはパパドも合わせてこれまた安心安定のおつまみ。
〆のカレーはマトンカレーのルゥだけ。カレーのあたまだけ頼めるのはカレー酒場として正しいスタイル。ゴーヤや茄子も入ったマトンカレーはバチバチにスパイシーで、これまたお酒が進みます。
やはり何を食べても美味しい。
ブロッコリー素揚げ
バイマックルーサワー
マトンカレー (ルゥのみ )
今回は大阪、東京のカレーマニアの舌を喜ばせてきた腕利きシェフ藤田さんに色々とお話を聞いてきました。
カレーおじさん\(^o^)/(以下「カ」と表記):そもそもカレーの道に入ったきっかけはどんなものだったんですか?
コイチカレー藤田さん(以下「コ」と表記):学生時代に大阪に来てインデアンカレーとらくしゅみにハマって食べ歩き始めました。色々食べているうちに元々料理が好きだったこともあって自分でも作りたくなってレシピ見て作ってみるようになったんです。サラリーマンをしながら食べ歩き、当時のカレーブロガーの方に自作カレーを振る舞うということをしていましたね。
カ:そうだったんですね。そこから旧ヤム邸に入ったのはどのような流れですか?
コ:旧ヤム邸の前身的店舗のヤムカレーに自分が客で通ってたんですが、自分も作って振る舞っているのを知られてまして、そこから誘われました。旧ヤム入ったのは2012年の頃です。
カ:ちょうどその頃は大阪スパイスカレーがブームとなっていた最中ですよね。
コ:そうですね。「カシミール」とか人気店はもっと前からあったんですけど、2010年頃「宝石」が人気店となって、セイロンカリー、ロッダグループなどスリランカ料理のお店も流行り、それらに影響受けて一気にスパイスカレーが増えていった印象です。
カ:間借りカレーと言う観点で見ると、どんなお店が印象的でしたか?
コ:谷口カレー、ゼロワンカレー、デッカオ、そしてアアベルカレーが当時の四天王ですね。どこも既に完成された美味しさでした。
カ:錚々たる面子ですね。デッカオもアアベルも今や独立して大人気店。ゼロワンは東京に移転して人気となっているし、その中で谷口カレーは今も間借りを貫いているのがまた凄い。いずれにしても実力のある人達が同時期に始めたから相乗効果的にスパイスカレーや間借りカレーの人気が出たと言えるのでしょうか?
コ:そうでしょうね。そんなお店を見て、では自分もやってみようかという人が増えたと思います。そんな中から出てきた「堕天使かっきー」によって、カレーの自由度が一気に高まったと思います。お店同士でコラボする人も増えて全盛期を迎えた形ですね。
カ:その後旧ヤム邸の下北沢進出により店長として東京へ行き、数年を経てまた大阪に戻ったという流れだと思いますが、東京時代を経て第二の大阪時代、間借りカレー界隈はどのように変化していましたか?
コ:ノリが変わってました。
カ:と言うと?
コ:昔の大阪の間借りカレーは実店舗でやることを前提としていませんでした。何かやりたいことがある人が、店舗を持つほどでもないけどカレーを作るのも好きだし、自分のライフスタイルに合わせて間借りという形を選択する人が多かったです。結果として人気が出て独立したお店も多いですが、最初から実店舗を目指した間借りではなかったのが以前のノリ。今は最初から実店舗を開店する準備期間というかステップアップの為に、実店舗ありきの間借りに変わったように思います。
カ:なるほど! 確かに東京もそういうお店が多いですよ。そこが大阪の間借りカレーと東京の間借りカレーの元々の差でしょうか?
コ:そうですね。大阪は手段としての間借り、東京は目的あっての間借りかもしれません。今はどちらも目的あっての間借りの方が多いですが、まだ大阪の方が手段としての間借りをやっている人が東京より多いと思います。あとは大阪のもったいない根性で空いている時間をなんとか有効利用しようという考えだったり、そういうのも東京より強いからこそ増えたんでしょうね。
カ:そうですね。では今の店舗で間借りをスタートするようになった経緯はどのようなものでしたか?
コ:元々昔からここのバーの客だったんです。東京から大阪戻ってきて何しようか考えていた頃、ここのバーのマスターが療養中だったので店を代わりに使ってと言われて間借りカレーを始めました。もっと言うと、僕が初めて人にカレーを出した店はこのビルの今はなき店舗で、その時の店長が今の店舗のオーナーの奥様だったという非常に縁のある場所なんです。そんなこともあってはじめたんですが、ここのバーのマスターが亡くなってしまいまして、2月からこの場を引き継ぐ形で独立店舗となりました。この場所を無くしたくなかったんですよ。自分も愛着ある場所で、関係者との縁も深くて。もちろん契約関係はしっかり仕切り直してスタートさせましたが、まだ間借りの気持ちを残しながら今は営業しています。
カ:そうでしたか。では元々またカレー屋をやろうと考えていたわけではなかったのが運命に導かれてこの場に戻ってきて、独立したというストーリーなのですね。
コ:はい。不思議なもんですね。
カ:では最後に間借りカレー店を始めようと考えている方、あるいは既に頑張っている方に何かメッセージをお願いします。
コ:とにかく作れ! ってことですかね。間借りだからこそできるチャレンジがあるし、色々な挑戦をできる期間が間借りの期間だと思います。実店舗となると安定させないといけませんから。だから考える前にどんどん作っていくのが良いです。それによって技術も向上しますから。
お昼のカレーあいがけ
大阪のマニアをうならせ、東京でもスパイスカレーが広まるひとつのきっかけになったお店を引っ張ってきたシェフだからこその説得力ある力強い一言でした。
先述したように東京は実店舗独立に向けての経験値として間借りをする方が多いように思います。だからこそ今できることをやらないと意味がないというわけです。
「考えるな、感じるんだ」というのは僕が尊敬するブルース・リーの言葉ですが、「四の五の言わず作れ」というのも共通する魂を感じました。
店舗情報
内観
店名:
コイチカレー 住所:大阪府大阪市中央区東心斎橋1丁目4−7和泉屋バー内
営業時間:ランチ11:30〜14:30LO 平日ディナー18:00〜21:30LO
定休日:月曜日
営業詳細はInstagramをご確認ください
Instagram:
https://www.instagram.com/koichi_curry/
カレーおじさん\(^O^)/
2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレーアディクト。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380 「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!お楽しみに!